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【小説】パーティを定年退職させられましたがまだまだ冒険者やってます

ハードボイルドテイストなファンタジー小説はいかがですか?

下記はカクヨムに掲載中の「パーティを定年退職させられましたがまだまだ冒険者やってます」の冒頭です。

 

パーティ追放

 ベテランと呼ぶには彼は歳をとりすぎていた。野宿ばかりで赤銅色に焼けた肌には深い皺が刻まれ、髪の毛は風で痛み、乾いた銀色に変色している。
 先月、所属していたパーティの年齢制限に達した彼は、大きな皮袋に一杯の金貨を餞別として渡され、町に戻された。
「ガストン爺さん、いままでありがとう。そろそろ人生をゆっくり楽しんでくれ。そのために俺たちのパーティには年齢による退団ルールがある」
 息子ぐらいの年頃の男にそう言われたが、いい厄介払いだなこれはとしか彼には思えない。今まで、そう思って年老いたメンバーたちを送り出してきた。自分だけ例外であるとは思えなかった。
 ゆっくり人生を楽しめと言われても、町での暮らしは彼には向いていないのだった。だからこそ冒険者になったのだし、長年の放蕩生活で彼の我儘勝手さは悪い出来物のように成長してしまっていた。はっきり言えば、もう手遅れなのだった。
 彼は仲間たちが餞別にくれた金貨――それは、普通に暮らしていれば彼のこれからの生涯を支えてお釣りが出るほどの大金であった――を三日で使い果たした。彼は下手くそな丁半博打打ちでもあったから、使うのは実に簡単なことだった。
 金を使い果たした彼は、槍を手にして町を出た。もうパーティへは戻れない。しかし、一人でも冒険はできる。町の外に一人っきりででかけるのは危険だったが、彼は稼ぐ方法を冒険以外に知らなかった。モンスターを倒してドロップした魔法石を持ち帰ってギルドに売る。そうして得た金をすぐに使い果たす。
 得意とする槍のスキルは上限レベルまで達し、今となっては伸びしろは全くない。彼の冒険者としての能力は減りこそすれ増大する要素がまったくなかった。
 彼はまだ現役の冒険者である。城外に繰り出し、ひとりで|怪物《モンスター》を狩っている。

 

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